秩父"贄川宿 かかしの里" 前編 / 歩くガイドブックと里の歴史 / 命と想いのかかしたち
"命ある人"が作った"命宿るかかしたち"。
そこは「かかしの里」
秋も色めき出したころ。
秩父鉄道"三峰口駅"に降り立ち、とある里を目指すことにした。登山やハイキングのような人々もちらほら見える。駅前の古びたCoca-Colaが象徴的。
荒川周辺マップ。亀裂が入り、古びているが、何人もの人の役に立ってきたのだろう。
駅前には数件の食事処が並ぶ。空の雲の勢いに心踊りながら、向かうのはあの山の麓。
川を跨いだ反対側は国道が走っていて、歩道橋が見えてきた。左下に何か見えてきたぞ。
「贄川宿」「←かかしの里」と書いてあり、両側に人形が置かれていた。さぁ、ここは"かかし"が暮らす里。
お出迎えしてくれるかかしたち
まず入り口にいたのはキリッとした目の少年と素敵な笑顔の少女。二人は幼馴染なのかな。
看板の裏側には、「2017年1月 深田静江書」という文字。
里の入り口を抜け、少し歩くと女性が立っている。こちらはマダムだろうか。落ち着きがある。更にかかしの里の奥に誘われていこう。
「贄川宿観光トイレ」の側には登山の格好をした女性。
「ようこそ 御岳山へ 登 山 気をつけてね!」の優しいメッセージに癒される。
「町区分公会堂」の前には赤やピンクの目立つ女性がいる。
ちょっとかかしをじっくり見てみようと近づいてみることにした。かかしだからこそ、目・鼻・口や皮膚は布地で作られているが、実際に着ている服はおそらくどこかで準備した物なのだろう。いらなくなった洋服などの寄付だったりするのだろうか。手は軍手なのだが、なんでこんなにも苦労の感じる哀愁を感じるのだろう。
公会堂の前のお宅では洗濯をする女性。使っているものが洗濯板というのがとても時代を振り返るキーアイテムになっているように感じる。笑顔は本当に穏やかだ。
思うに、おそらくお宅一つ一つの前にかかしが置かれているのだろう。全部見ていこう。
兄弟のようなキッズ二人に
おじいさんとお孫さん
三輪車を教えるお母さんと息子さんもいた。
なんだろう。このかかしを作った方々の思い出や願いのような気持ちが、それぞれのかかし達に宿っているじゃないかと感じるようになってきた。
贄川宿と歩くガイドブック
入り口で看板の出ていた「贄川宿」に辿り着いた。入り口には不思議な木彫りの人形。ガラス越しにおばあさんと幼いお孫さんの二人がいらした。
贄川宿は案内所みたいだったので、中に入って見学させてもらうことにした。中には昔ながらのおもちゃがあったり、おそらくここかかしの里に関連していた物が置かれているのだろう。右奥にも立派な着物を着た女性が座っていた。「失礼いたします。」。ただ、かかしはいるが人の気配は未だに見えない。
贄川宿にて「歩くガイドブック」を手に入れた。
贄川宿かかしの里
◎この小さな集落にかかしが何体あるか探してください。
◎宿場の縁側はギャラリーになっています。庭先に看板の出ているお宅は見学できます。
◎かかしサロンは休処になっています。
何体あるか・・・?
この歩くガイドブックのおかげで、かかしの里には自分が想像していたよりも多くのかかしがいることが予想された。ゴクン。気になるのは「かかしサロン」「かかしP」そして「かかし広場」だ。ガイドブックにも書いてあるように、何体のかかしさんがいるのか確かめてみようじゃないか!
なぜかかしを作ろうと思ったのか
贄川宿のガラスには、かかしの里が東京新聞に取り上げられた記事が貼ってあった。なぜこのようにかかしをたくさん作るようになったのだろうか。
かかしの里の歴史 ※記事要約
贄川宿ができたのは江戸時代中後期ごろ。かつては武蔵と甲斐を結ぶ街道「秩父往還」の旅人達の休息地として発展した。さらに、霊峰・三峰神社参拝や秩父地方の寺を回る礼所巡りなどで宿場も増えていった。
しかし、1930年(昭和5年)に秩父鉄道が三峰口まで伸びたことで、宿場はたちどころに寂れ、過疎化の波もありこの地域の住民は39世帯、約80人にまで減った。
住民たちはかつてのにぎわいを取り戻そうと知恵を絞った。1990年ごろからは毎年、民家の軒先で写真や絵、手芸を展示する「秋の縁側展」を開き、15,000人もの観光客を集めるイベントに育て上げた。しかし、住民の高齢化で維持が難しくなり2014年が最後となった。
どうにか「秋の縁側展」の次のことができないかと考えていた2015年末ごろ、地元の健康インストラクター"深田澄子さん"が、農業誌で「徳島県三好市のかかしづくり」の記事を見つけ、さっそく主婦仲間に声をかけた。今では、60代を中心に約20人の女性がかかし作りに関わっている。2016年3月からは、丹精込めて作ったかかしたちを集落の各所にしつらえ、この地を訪れる人々を楽しませている。
「ちょ、ちょっとそこの方」と声をかけたくなるほど、命を感じるかかしたち。むしろこのかかしたちは、集落の住民たちの想いの込められた結晶なのだろう。
想いは形になる。
ではさらに、かかしさんたちに会いに行こうではないか。
後編につづく
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