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SHADOW OF SHADOW / 彫刻家キム・ヨンウォンが見る影の世界 / ない空間に見えるある空間

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ない空間には、ある空間が広がって、そこに本当が見つかって。

  

 

 

 

彫刻家キム・ヨンウォンが見る影の中の影

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photo:그림자의 그림자 (흘로 서다) / 김영원 (2011)
SHADOW OF SHADOW (alone) / Kim Young Won

 

ソウル市内を歩いている時、遠目から「大きな人がいる!」と思ったのが彼の作品との出会いだった。作品名は、"그림자의 그림자(SHADOW OF SHADOW)"。日本語では「影の影」というなんとも意味深いタイトルだ。

 

「影の影」を作ったのは、韓国のベテラン彫刻家"キム・ヨンウォン(Kim Young Won)"、1946年生まれ。キム氏は、1975年から芸術関連の活動を始めて以降、ソウルの中心地である光化門広場に立てられた世宗大王像を制作したり、世界でも数多くの彫刻展に参加するなど、韓国でも世界でも名高い地位を築いている。また培ったキャリアを活かし、国立大学忠北大学や弘益大学では美術教授に、香港大学では芸術学部長に就任し教育にも力をいれている。2008年以降は韓国彫刻家協会の理事長を務め、韓国の美術界では欠かせない存在になっている。

 

「影の影」の作品をよく観察してみると、全身が白いマネキン。右半身は人の形を再現しているが、左半身はスパッと一面が切られたように綺麗な平面になっていることが特徴的だ。またタイトルに(alone=一人きり)とあるのも何か意味がありそうだ。

 

なぜこの作品ができたのか答えは出ず、私は先を進むことにした。

 

 

 

 

DDPに"SHADOW OF SHADOW - The Road"

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東大門(トンデムン)という地域を歩いていると近未来的な建物が見えてくる。2014年3月にオープンした「Dongdaemun Design Plaze(東大門デザインプラザ)」、通称"DDP"だ。イラク出身の建築家ザハ・ハディッドによって設計され、空間を捻じ曲げたような非線形な立体設計技法が用いられている。DDP内にはミュージアムやアートホール、デザインマーケットやショッピング店など、ソウルの新たなランドマーク的存在になっているという。

 

 

 

 

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photo: 그림자의 그림자 - 길 / 김영원 (2016)
SHADOW OF SHADOW - The Road / Kim Young Won

 

そのDDPの入り口にまたしても"SHADOW OF SHADOW"が立っていた。今度は全身金色でDDPの中央部分をじっと見つめている。完成は2016年、高さは8メートルある。今度のタイトルには"The Road = 道"と名付けられ、先ほどのaloneとは意味合いが違うようだ。

 

 

 

 

 

貴重な制作風景の動画があったので、見てみてほしい。型に銅材を流し入れ、部分部分を溶接して、表面を整えていく。幾人もの技術者の協力があって作品が出来上がっていることがよくわかる。4:06辺りに出てくる白髪の男性がキム・ヨンウォン氏だ。

 

 

 

 

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aloneを見て考えていて、The Roadを見たことで気づいたことがあった。切り取られた面を見ていると、そこには人の体がないはずなのに、切り取り面の部分に想像の空間を頭の中に広げていることだった。もしかしたら、「あることはあること、ないこともあること」なのではないかということに気づく。切り取られた先にも空間が広がり、人にそれを想像させる。ないはずの空間に何かがあり、人はない空間にある空間を見出そうとするのかもしれない。

 

 

 

 

DDPに"SHADOW OF SHADOW - Flower Blossom"

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photo: 그림자의 그림자-꽃이피다 / 김영원 (2016)
SHADOW OF SHADOW - Flower Blossom / Kim Young Won

 

The Roadの少し先にまたしても"SHADOW OF SHADOW"があった。The Roadの金色より少し茶色がかっている。こちらも完成は2016年、高さは8メートル。タイトルはFlower Blossom(花の開花)。

 

 

 

 

 

こちらも貴重な制作風景が残っていた。人の体が開く部分の溶接にかなり苦労していることがわかる。

 

 

 

 

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キム氏は、Flower Blossomでは、「人間の欲望と、人間の歴史の誕生と消滅を、花の生成と消滅で再現した」という。人が見ている外側の自分の中には、祖先の血や欲や夢や悲しみなどが渦巻いて、もっとも内側の自分が見えない。仮に自分という存在が何層にも連なって自分ができているのだとして、一番内側の自分は外側からは見えないけれど、一つ一つを剥がしていってくれる誰かがいれば、一枚一枚剥がしていって、本当の自分を見つけることができるのだろうか。

 

 

 

 

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キム氏は「影」について以下のように表現している。

A shadow is a reflection of the individual’s scent and emotional space.

影は、個人個人のにおいや感情的な部分を写すものだ。

 

 

"ない空間"で見えないものは人の想像力で"ある空間"が見えたり、表面的には見えない部分は花びらを一枚一枚はがすようにしていければいつか本当の自分を見つけることができる。

  

 

「影」の中にこそ、自分の答えがあるのかもしれない。

 

 

 

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*引用・参考

Kim Young-won brings unique perspective to historic Italian city-INSIDE Korea JoongAng Daily

Human form-INSIDE Korea JoongAng Daily

10 Korean Sculpture Artists to Watch | The Artling

10 Korean Sculpture Artists To Watch | Hong Kong Tatler

The Dongdaemun Design Plaza, Seoul, South Korea - Travel Past 50

Korea and Italy rediscover nudity

ARTE COMMUNICATIONS - Venezia | Open Venezia | Spazi Espositivi | Mostre | Esposizioni | Eventi - ITALIAN AND COLOMBIAN ART IN THE CHANGWON SCULPTURE BIENNALE 2016

Sculpture Exhibition of Kim Young Won [Me-Towards Future]

동대문디자인플라자 '나 미래로' 김영원 조각전 - YouTube

東大門デザインプラザ(DDP)|東大門(ソウル)の観光スポット|韓国旅行「コネスト」

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