ウィリアム・マクエルチュラン『出会い』 / 彼の半生を振り返る / 作品から見える温かさ
出会うために出会っているのかもしれない。偶然も必然に。
静岡によく行くことがある。お茶が有名で、伊豆や箱根などの温泉街も多く、海が近いから魚だって美味しい。そんな静岡の静岡駅の近くに一つの忘れられない作品がある。
作者は"William McElcheran"(ウィリアム・マクエルチュラン)、作品名は"Encounter"(出会い)。二人の少しガタイのいいビジネスマンがばったり出会ったような描写が描かれている。外国のサイトでは、"Encounter two business men bumping into each other"と表記もされていた。
ウィリアム・マクエルチュランは、建築家で画家で彫刻家という数々の顔を持っている。1927年にカナダのオンタリオ州西部にあるハミルトンという地で、バプテスト教会の家族の下で生まれた。大学は、カナダの中でも最も古いアートデザイン学校、OCAD University(the Ontario College of Art and Design)をクラストップで卒業している。彼は、Giacomo Manzù(イタリア彫刻家)やJacques Lipchitz(リトアニア彫刻家)に魅了され、ドナテロやミケランジェロなどにも興味を注いだという。
20-30代は、Bruce Brown and Brisley Architectsという建築事務所でチーフデザイナーをしており、数々の協会や大学などのデザインを手がけた。その後40代前後は、OCAD Universityで彫刻を教えたり、トロントの建築大学で"アーティスト・イン・デザイン"(各種の芸術制作を行う人物を一定期間ある土地に招聘し、その土地に滞在しながら作品制作を行わせる事業)で作品作りを続ける。また、46歳の時には、自ら"Daedalus Designs"を立ち上げ、カナダ・US・ヨーロッパ内での公共彫刻のプロデュースもしていた。
1975年、彼はイタリアのピエトラサンタに移り住み、鋳造技術にさらに磨きをかける。そして、その効果もあり、見た目の大きなビジネスマンの作品で再び賞賛されることになる。彼のビジネスマンは、コートやネクタイ、帽子やブリーフケースを身にまとい、社会への期待などを押さえ込みながら、忙しい日々を急ぐ姿が描かれている。マクエルチュランの作品は強いメッセージ性がありながら、なぜか共感性が高い。権力や力を求め、権力や力に従う姿にどこか昔ながらの哀愁みたいなものを感じるからだろうか。
"Encounter"(出会い)も、その哀愁に包まれている。彼らは似ているようだが違うようだ。兄弟か友達か、はたまたこれから知り合う二人なのか。それとも自分自身との新しい出会いなのか。見ているだけで想像力を掻き立て、なぜか二人の性格なども考えたくなってしまう。共感性が高いのは、作品の中に人としての温かさを感じるからなのだろう。カナダのトロントにあるYork Universityにも同じ作品があり、そちらが先にできて静岡にも作られた。また、日本で見られるマクエルチュランの他作品は、"PLEASE DO NOT RUN"という壁面に人が流れていくような描写がされた作品や、"TIMEWISE"という男性が腕時計を見る作品を見ることができる。
マクエルチュランはインタビューで言っている。
"I always thought of art as being an expression of something more than the individual, but of civilization as a whole."
私はいつも個人のこと以上に文明全体に関する表現になるような作品を考えている。
また、様々なメディアやジャーナリストも以下のように話す。
Canadian Business magazine
"McElcheran's fat little businessman is now something of a cult item among the well-to-do in Canadian business, worth his weight in much more than bronze."
マクエルチュランの太って小柄なビジネスマンは今、カナダビジネスの富裕層の間でちょっとしたカルト的アイテムになっており、ブロンズの重さ以上に彼の体重には価値があります。
Sol Littman (freelance journalist)
“McElcheran’s work is bitingly satiric yet warmly human.”
マクエルチュランの作品はかなり風刺的ではありながら、温かな人間性を感じるんだ。
マクエルチュランさんは吹上駅にある壁面作品の中で言っている。
"PLEASE DO NOT RUN" SO FAST THAT YOU MISS THE MOST BEAUTIFUL THINGS IN LIFE.
そんなに早く走らないで。人生でもっとも美しい物を見失ってしまうから。
日々の一つ一つが大切であり、その全てが愛おしいものなんだろう。でも少し社会への欲みたいな物を欲しがると、もがき苦しむことになってしまう。自分とは何だろう、自分には何ができるのだろうと日々考えていくことは必要でありながら、実はすでに出会っている人が、最高の出会いになっているのかもしれない。
出会いの先には、そこから一つ一つを見返していくことが必要だったりするのかな。
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*引用・参考
・William McElcheran (Estate) - Kinsman Robinson Galleries, 108 Cumberland St, Yorkville
・William McElcheran - Wikipedia
・William McElcheran Humanism in Bronze
・Bill McElcheran - Market leader in selling artworks by Bill McElcheran
・The Encounter - McElcheran - Toronto Sculpture
・名古屋講演会の”Please Do Not Run”と「慌てず急げ」 | 商人舎 結城義晴ブログ
・AIR_J: Online Database of Artist-in-Residence Programs in Japan
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Shibuya Lush & HOME presents "グローリア宮益坂"
2019/1/20(日) ※時間は別途連絡
LIVE: ぼんじり / Lamb / R.R.P / 高橋飛夢とばばばびお / LAIDBACK CX / oookay!!! / nego / no entry / 夕暮れの動物園 / and more…
open / start TBA(後日連絡)
advance / door 2000yen / 2500yen (+1drink)
LushとHOMEの合同ライブに楽しい方々がたくさん出演する間違いなく楽しい日。お時間あれば、お気軽にご連絡ください。お待ちしています。
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