カンボジア・ラオスの旅 [2] / アンコール・ワットを探る / What Angkor × 命を削った細かな作業 × タイムスリップした時間
時を旅する
ヴィシュヌ神とデバター
アンコール・ワットで息を吸う
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※前回の続き
アンコール・ワットへ向かう
二日目が始まった。ホテルは朝ごはんがなく、時間もおしかったのでカロリーメイトを2本食べながら、仕度をした。(僕は旅をする時はカロリーメイト4本入りを5箱ぐらい持っていくようにしている。)
昨夜、杯を交わしたアンさんが本日も案内役。僕らはアンコール・ワット遺跡へ向かって出発した。昨夜は暗くて気づかなかったけれど、ホテルの周りはローカル感溢れるお家に囲まれ、道などもほとんど整備はされていなかった。なので、トゥクトゥクは凸凹道をガタガタしながら進み始めた。出発時すぐに出会った一匹のワンちゃんもあいにくブレブレの写真となった。
道には終始ゴミが捨てられている。これが普通であり、これが日常。
日本の街中がいかに整備されているかに感謝の気持ちが湧いた。日本のゴミ収集の従業員さんは今日も明日もみんなのゴミを集めてくれていることを忘れてはいけない。
少し落ち着いた道になってきた。少しモヤってはいるけれど、清々しい朝を感じていた。
高級ホテルの従業員さんのお仕事も開始のようだ。
ヒンデゥーの神々も日常に馴染んでいる。
商店らしきものも現れた。
そう思っていると交通量も次第に増え始めていた。
ゆらり揺られ30分ほど。アンさんはエンジンを切った。どうやらここでアンコール遺跡群の入場チケットを買うらしい。まだ8時台だというのに多くの人で賑わっていた。
チケットは3種類ある。1日券(20US$)、3日券(40US$)、7日券(60US$ / 購入から1ヶ月間の内の任意の7日間有効)。僕は3日しかカンボジアにいないので、3日券を買った。購入の際は顔写真も撮られる。
これがそのチケット。寝不足だったので、顔面蒼白。
チケットを買ったらすぐアンコール遺跡にいけるか?というとそんなに甘くはない。アンコール遺跡は広大なため、チケット売場からまたトゥクトゥクに乗って移動が必要になる。
少し景色が変わってきた。アンさん曰く、この森林の奥にアンコール・ワットはあるらしい。
すると何やら遺跡のような物が頭を出した。あれだ!
アンコール・ワットとは
photo: Google マップ
「アンコール・ワット」とは、1992年にユネスコ世界遺産に登録された、世界でも有数の観光スポットの一つだ。"Angkorアンコール"はサンスクリット語で"王都"を指し、"Watワット"はクメール語で"寺院"を指す。その姿はカンボジアの国旗にも使用されている。特に、光輝く太陽を神格化した神"ヴィシュヌ神"に捧げる寺院とされる。
建設の始まりは、12世紀前半。創建者であるスーリヤヴァルマン2世によって、30年以上の年月をかけて建てられた。建築方式は、大伽藍(だいがらん)や彫刻などが美しい「クメール建築」を採用。建物の材料は、見える部分は"砂岩"を、見えない部分には"ラテライト(紅土)"が主に用いられている。見学の際に、建築で特に注目したいのは、壁画だ。少し敷地内を歩けば、女神を意味する"デバター像"が壁に描かれており、一つ一つ表情も服装も異なるため、丹念に掘られ描かれていったことがわかる。また、"レリーフ"と呼ばれる浮き彫りの彫刻も注目だ。ヒンドゥー教などに代々伝わる物語や経典を題材に、壁一面に彫られており、見るものを圧倒する強さがある。
敷地は、約1.5km四方の大きさがあり、周りは水で囲まれ、中央に本堂や回廊がある作りとなっている。また、正面入り口である西塔門を入ると4つの沐浴場の跡がある。それらの跡が示すように、アンコール・ワットは"水の都"と考えられている。当時、農業における貯水施設としての役割があり、必要な水源確保とその水を四方の耕地へ分配するよう構成されていた。
日本だけでなく世界でも上位に入る観光スポットであるアンコール・ワット。2016年の観光客数は約500万人ほど。カンボジア観光省は、2020年までに年間観光客数:750万人、経済効果:50億ドル、雇用:約100万人の目標を掲げている。カンボジアでは、農業・縫制業・観光業の三大産業によって雇用が支えられている。特に観光業は、トゥクトゥクやタクシーなどの運送業、ホテルや民宿などの宿泊業、遺跡群や街中に多く出店するお土産店などがある。これらからも、アンコール・ワットは地元住民の生活を支える大きな存在だということがわかる。
西塔門のヴィシュヌ神とデバター
念願叶ってたどり着いた"アンコール・ワット"。アンさんと4時間後に待ち合わせをして、一人歩みを進めた。数多くの観光客がそれぞれの思いを持って歩いている。それぞれの人生がある中で、同じタイミングでアンコール・ワットの入り口を歩くことに仲間意識みたいな物を感じたりしていた。
アンコール・ワットの入り口には蛇身"ナーガ"様がお出迎え。
ストレートの道を少し歩くと西塔門が現れた。
中に入ると、太陽を神格化した"ヴィシュヌ神"がお出迎え。「おじゃまいたします。」と声をかけた。
西塔の壁にはさっそくレリーフが描かれている。機械など無い時代、当時の作業者の時間(命)を削って描かれたものだ。
デバター像も描かれている。何でも、中には未完成のデバター像もあるんだとか。工期に間に合わなかったという理由らしい。
首なし銅像もいたりする。
西塔を出て写真を撮った。本塔に行く前にすでに圧倒された気持ち。
中央の道に戻ろう。
それでは
進んでいこう、本塔へ。
クメール建築の傑作"アンコール・ワット"
砂岩とラテライトでできている内装は朱色が映える。また経年変化が歴史の重みを感じさせる。
一つ一つ削り、一つ一つ彫り、一つ一つ積み重ねていった傑作。
絵柄も一つ一つ違う。完成当時は、朱色の上に金箔が塗られていたという話もあるらしい。
砂岩の楣(まぐさ)石を積み重ねた窓。外からは中の様子はわからないが、内側から外がわかる仕様。
中には崩壊している箇所もある。日本からも遺跡研究や保護のために出資や協力がある。
"水の都"を象徴する沐浴の跡。
一人一人がタイムスリップしたように時空を超えた時間を感じているようだった。
少し中の庭を歩くと、落石した石がたくさん落ちていたりする。
一方で、中には、神が並ぶ空間や、
またしても首が取れた銅像がいたりする。
それでは、いよいよアンコール・ワットの中央塔へ。
アンコール・ワットの中枢を探る
圧巻。
入り口から歩きながら思っていたけれど、アンコール・ワットは大きさの距離感がとても取りづらかった。遠映の計算がされているせいからか、中央塔の大きさがわからなかった。けれど、やはり大きな存在感を放っていた。
天辺まで入念に積み重ねられている。
一方で下側を見ると、なにやら模様がかかれている・・・
やることが本当に細かい。細部にまで彫刻が彫られている。
少し疲れたので、腰を下ろしてカロリーメイト・フルーツ味を食べた。よくどこかへ行くと、ちゃんと腰を下ろすことを心がけている。歩いていると見えないことが座ることで見えてくることがたくさんあるから。
座って見上げるアンコール・ワットに感慨深い気持ちになっていた。残念ながら僕が行った期間は中央塔には入れないらしい。残念だけれど、それもまあいいかという広い心があった。
せっかくなので、東塔など他の箇所も歩いていた。
写真を撮られる人と、その人を撮る人と、その二人を撮る人と、その三人を撮る僕。
ピンクのシャツを着ている人がいる箇所も歩けるので、行った際はぜひ歩いてみてほしい。少年に還ったように楽しいから。
入り口は西側で、午前中は逆光になってしまう。東側から撮るとやっと写真に青が出てきた。青空とアンコール・ワット、とてもいい。
どこかへ行くことは、新しい発見を探すことだろうか。それとも、自分の中に眠っている物を呼び起こすことだろうか。他者からもらい、自分も消化する。自分も与え、誰かも消化する。時空を超えて交わすコミュニケーションが遺跡には詰まっているのではないかと考えている。
※カンボジア・ラオスの旅 no.3に続く →→→
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*引用/参考資料
・D22 地球の歩き方 アンコール・ワットとカンボジア 2017~2018(ダイヤモンドビック社/2016年12月)
・Angkor - UNESCO World Heritage Centre
・カンボジアの2016年上半期の観光客数、韓国が下落し中国とタイが上昇[統計]
・100万人が訪れる世界遺産のすぐ隣にある貧困観光産業の光と影 | 海外レポート世界の街角お金通信 | 橘玲×ZAi ONLINE海外投資の歩き方 | ザイオンライン
・アンコールワットに支えられるカンボジア観光業 | コンサルティング | 大和総研グループ | 太田 紗奈絵
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