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亡霊が語りかけること / 目の感情 × 記憶の引き出し / ボルタンスキー × アニミタス × 庭園美術館

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目が伝える感情

記憶からくるなつかしさ

クリスチャン・ボルタンスキー

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心揺さぶられた展覧会"アニミタス"

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東京・目黒駅から徒歩10分ほどの場所にあり、敷地内に豊かな緑が広がる「東京都庭園美術館」。そこで2016年後半に一つの展覧会が行われた。

『クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス-さざめく亡霊たち』

期間:2016年9月22日(木・祝)–12月25日(日)

会場:東京都庭園美術館(本館・新館ギャラリー1・2)

HP:http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/160922-1225_boltanski.html

アクセス:東京都庭園美術館|来館のご案内

map:Google マップ

 

ボルタンスキーが伝えること

 movie: Boltanski interview - YouTube

フランスの現代美術家"クリスチャン・ボルタンスキー"。1944年にパリで生まれ、12歳で学校を退学した彼は、その後独学で絵画や芸術を学んだ。1968年には初個展を実施。彼の作品には、ユダヤ人である父の差別経験が影響されており、"生(存在) × 死(消滅)"がテーマとなっている。遺物に宿った時間や記憶を、映像や制作作品を通して表現している。そんなボルタンスキーの東京初展覧会に足を踏み入れた。

展覧会名の"Animitas アニミタス"とはスペイン語で"小さな魂"という意味。自らを"埋葬者"と語る彼が、歴史ある庭園美術館という場で"亡霊たちのセレモニー"を行う。例えば、チリの砂漠にある祭壇(彼が訪れた場所)に漂う死者への思い出という亡霊、歴史的な庭園美術館が培ってきた記憶という亡霊、また、それぞれの先祖がいたからこそ形成される人間の顔という亡霊などだ。そういった「過去の出来事や人々がいたことで残る亡霊が語りかけること」について、作品を通して参加者に語りかける。

本展覧会では、新作『さざめく亡霊たち』や過去作品のアレンジとなる展示もあり、コンパクトながら、見応えたっぷりな内容となっていた。

[作品一覧]

・2016年『さざめく亡霊たち』・・・声の反響を使った作品。作家・関口涼子氏の作成したフレーズを、庭園美術館の建物の特性を生かし響き渡らせた。

・2013年『眼差し』・・・ギリシャ人の身分証明書の顔を、先が透ける薄い布に印刷する。その様々な目から発せられる感情を感じられる作品。

・2015年『帰郷』・・・メキシコでの作品。重傷者を包むために使われる衣服を山にし、金色の覆い"エマージェンシー・ブランケット"で包む作品。金は存在感と災いを想起させる。

・2014年『アニミタス』・・・チリの砂漠に600個の風鈴を設置した作品。今回の展示では、その場の映像を巨大スクリーンに映して表現された。

・2016年『ささやきの森』・・・森の木々に風鈴を設置。訪れた人の愛する人の名前が書かれた風鈴は、思いが含まれた音となって響き渡る。

・2008年『心臓音』・・・録音した人の心臓音。人それぞれ音もリズムも異なり、人の生命の違いを感じる。今回は、赤い電球と鼓動のタイミングをリンクさせて表現。

・1984年『影の劇場』・・・おばけや骸骨をイメージさせる切り紙をライトで間接的に照らした作品。

大変お恥ずかしながら、僕自信はボルタンスキーについてほぼ無知だったのだけれど、展示に行って色々と感じることがあったのでここに残しておきたい。僕の感じたことや言葉の中で、何かを見つけてもらえたらうれしい。

 

『眼差し』『帰郷』

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人が写真を見るときに一番反応がいいのは、"人の目"だという。

スマフォをスクロールしても、きっと一番手に止まるのは、人が映ってこちらを見ている写真だろう。 なぜだか2016年の後半になってから、「目」に出会うことが多くなった。2016年冬にワイアードの出版イベントに行った際もEs Devlinの演出で目が使われていたし、今回のボルタンスキーでも『眼差し』のコーナーで使われていた。これは何かの戒めだろうか?でも、そのどの目も別にこちらを見ているわけではなくて、むしろその目の持ち主が自分自信を見つめているような目だった。主張しているような、寂しそうな、遠くを見るような、そんな目だった。目はコミュニケーションのツールのようで、自分を見つめるための目でもあるのかもしれない。そして、目の中に記憶や思い出が宿っているのかもしれない。

そういえば、二人で食事をする時はいつも不思議に思うことがある。カウンターで話をすれば相手に話しているようで自分に話しているような感覚になるからだ。それは、自分という目と会話をしているからかもしれない。一方で、テーブルで対面になると、急に相手と会話している気持ちになるし、恥ずかしくなったりもする。相手の目が自分を掘り下げているような感覚なるからだろうか。

2017年は"会う"ということを増やしていきたいと思っている。それはたくさんの色々な目と出会うということなんだと思った。

 

『アニミタス』『ささやきの森』

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人が"その場の空間にいる"と感じるために五感を使っていることに改めて気がついた。

目で景色を見て、鼻で香りを感じ、耳で音を聞き、肌で空気に触れ、口で呼吸をする。そして、空間を感じた経験は、次に脳の記憶に刷り込まれる。その記憶は五感と直結した記憶になる。だから試しに、目を瞑っても香りや音があれば景色が見えるし、耳を塞いでも景色や香りがあれば音が聞こえてくる。そう思うと、記憶って"引き出し"のようだ。

僕は『アニミタス』『ささやきの森』の空間にいると、2016年夏に行ったチリ・イースター島のことを思い出していた。強風で流れる雲、気まぐれな天候、波の音。四駆の窓からの景色に、美味しそうに草を食べる馬と緑の匂い。今、目の前にある作品と、自分の中にある記憶が結びついて、引き出しが開いた。そんな感覚があった。そう思うと、「五感を満たすことができれば、人は現地にいなくて現地に行ける」のかもしれない。

きっと今回のボルタンスキーの展覧会のことも別の引き出しに仕舞われたはず。そして、今後出会う何かに出会った時、僕は今日のことを思い出すための引き出しを開くのだと思う。

 

扉を開いていこう

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亡霊を意識すると、自分の周りの環境は自分以外の誰かがいたから作られてきたんだな、ということに改めて気づいた。だからこそ、展覧会に行ったり、映画を見たり、誰かと話をしたりすることで、自分以外の世界を自分の中に取り入れることができるのだとわかった。それは、自分では持っていない世界を自分の中へエキスとして注入し、自分なりに消化することで、新しい自分の世界が開けるということだろう。また、その自分の世界が誰かに影響を与えることができれば、とてもうれしい。

人の目を見て、自分の引き出しを増やして、新しい扉をどんどん開いていこう。その先には、自分の見たことのない世界が待っているはずだ。

 

おまけ:新年のご挨拶

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2017年、明けましておめでとうございます。

2016年4月よりスタートした"monokann"も一歩一歩進めることができ、2017年を迎えることができました。始めた当初は探り探りで、自分の頭の中でのモノカン(物事を考えること)を言葉に乗せてきました。そうこうしている内に、自分には足りない物があることや、知りたいこと・知らないことがまだまだあることにも気づきました。だからこそもっと世界を広げていきたいと思うようにもなれました。また、#奇怪な物を見に行こう というテーマの下、日常に潜む不思議や奇妙な存在を取り上げることで、読者の方も含め「頭の中の固定概念を壊したい!」という思いにもなりました。

2016年のmonokannでの後悔は、"週に1度の更新を目標"と掲げながら、1ヶ月に1回などの投稿になってしまったことです。自分が納得いく答えや考えに至るのに時間がかかりすぎてしまったことに申し訳なさを感じます。でも楽しんでやっていました。イェイ。2017年は、なんとか更新頻度を上げて、読者の方の新しい発見や考えと出会えるようにできればと思っています。

ではでは、2017年度、それ以降も、どうぞmonokannをよろしくお願いいたします。

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 *引用/参考資料

東京都庭園美術館|クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス-さざめく亡霊たち

TOKYO METROPOLITAN TEIEN ART MUSEUM|Christian Boltanski Animitas – Les âmes qui murmurent

Christian Boltanski - Wikipedia

Christian Boltanski | artnet

Christian Boltanski born 1944 | Tate

Boltanski: Es importante nombrar al desaparecido - Grupo Milenio

Foux de fa fa contemporary exhibition design: Christian Bolanski

Alexander S. Onassis | International Online Magazine

 

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