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物事を考え、新しい「1」を創り出す

文豪達の手紙術 / 一人に向けた言葉 / 伝わる気持ち

 

[CM] 嵐 Arashi / 郵便年賀.jp - 年賀状、ください。宣言篇より

2015年の12月初旬、テレビを見ていた時に一つのCMが流れました。

 『嵐の"年賀状、ください"』

小学生の時などは、先生や友達に一つ一つ必死に書いていた年賀状。けれど、携帯を持ち始めてからはメールで新年の挨拶をし、ここ2, 3年はSNSに投稿するということをしていました。だから、CMに対して「なんで年賀状なんて出すんだろう」なんて発言をしていたぐらい、僕はこの時まだわかっていませんでした。むしろ忘れていたんだと思います。年賀状、はたまた、手紙をもらうことがどういうことで、送るということがどういうことなのかを。

文豪の気持ちの込め方

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そんな僕が今年から年賀状を書こうと思った一冊。

文豪に学ぶ超一流の手紙術」亀井ゆかり(サンマーク出版

この本の中には、夏目漱石太宰治川端康成などの文豪達が書いた手紙を抜粋して、手紙にどういう感情を乗せていたのか、どんな書き方のテクニックを使い表現していたのかを説明してくれています。とにかくどの手紙もユーモアと個性に溢れていて、気持ちが滲み出ていることに感動しました。

やわらかさ と 現実感

例えば、SF作家"星新一"。彼が書いた年賀状(P.42より)、

賀春 平成三年元旦

これからの一年

おだやかな気候で

なごやかな世の中で

仕事を少々

疲れも少し

だといいけど

星新一

一文一文は短いながら、使われている"おだやか"や"なごやか"をあえて漢字にしていないところ。そして、最後に"だといいけど"の締めにより、「その気持ちわかる」と思ってしまう共感性。やわらかな雰囲気を出しつつ、最後はふんわりとした表現ながら現実的な逆説を差し込む。とても言葉選びのセンスが光ります。

想像できる単語 と 遊び心

次も、星新一の年賀状(P.32より)、

賀正

昭和五十一年元旦 端正 清澄 長寿 樹木

目的 適切 節制 成功 高級 究明 迷案

安泰 太陽 要請 精請 専念 年賀

星新一

一年間の抱負を"二字熟語"で並べ、しかも全てが"しりとり"になっている。そして、それぞれの単語から受け手は自由に抱負を想像でき、加えて、しりとりによって遊び心も感じることができる。とにかく「自分が伝えたいこと」と、「受け手を楽しませること」の両方を叶えているユーモアさに驚きます。

音のリズム と 会いたい気持ち

最後に紹介するのは、詩人・立原道造(みちぞう)から小説家・杉浦明平(みんぺい)に送った借金の手紙(P.246より)、

tat・ミンに・用事を述べる・ハガキ・

ミンよ・! ぼくと・はやく会はないと・僕は借金を・忘れてしまふ・ぞ。それから・あべこべに・金を貸したなど・と・こつちで・言ひはる・ぞ。それが・いやなら・製図室へ・会ひに来い。土曜日でも・ひるすぎまで・画いてゐる。ミン・よ! 用事は・をはつたよ・

読んでいるとハネるようなリズムを感じるので、読めば読むほど楽しくなってくる。そこに加わる、借金ではなく、"実は会いたい"という気持ち。愛せるヒネクレ感が、逆にかわいさと好感をよびます。

手紙を書くということ

こんな楽しくて個性の詰まった手紙ばかりを読んでいると、自分も手紙が書きたくなってきました。でも、なぜ手紙を書くことがいいことなのか?

一つは、「1対1」だということ。

「今、僕はあなたに向けて気持ちを伝えているよ。」ということが伝わる。忘れていない、気にかけているという、手紙の先にいる一人に向けて書くこと。SNSのような、複数人に向けた新年の挨拶は、結局誰の心にも届いていません。当然のように一人に向けた言葉よりも、複数人に向けた言葉の方が気持ちのエネルギーがばらけてしまいます。

もう一つは、「手書き」だということ。

文豪達の手紙は全て手書き手書きにすることで、その人自身の性格や空気感が伝わる。それと同時に、気持ちを込めてくれたのか、雑に書いたのか、という相手に対する正直な気持ちが見える。だから、思いの詰まった文字は、それほど相手に伝わるんだと感じました。

今の世の中は、どんどんコミュニケーションが簡略化されてきています。だからこそ、より思いの伝わる方法を取ることで、自分も相手も"特別"になれます。年賀状でも手紙でもいい。大切な人へ、仲良くしたい人へ、自分の言葉と文字で、気持ちを送ってみてはどうでしょうか?

 

*文豪に学ぶ超一流の手紙術